|
(「水滸伝」第三十五回〜駒田信二訳・平凡社刊より)
郭盛: 今日こそ決着をつけてやる!
呂方: それはコッチのせりふだぜ!
ふたりの勇士は、たがいに方天の画戟を使ってわたりあうこと三十余合におよんだが、勝敗は決しなかった。
呂方: なぁ、思ったんだけどさ…
郭盛: どうした?
呂方: 勝負、ジャンケンでも良くね?
郭盛: ………そうだな、互いに力量は互角とわかっているのだから、運で勝負した方がいいかもな。
呂方: そうとわかれば話は早い。いくぞ!
郭盛: ちーれっ…
郭盛・呂方: おい、待てよ!
郭盛: なんだよ「ちっけっ」って!掛け声は「ちーれっぴ」に決まってんだろ!
呂方: はぁ!?「ちっけった」知らねぇのかよ!なんだ「ちーれっぴ」って!
郭盛: なんだと?
呂方: やる気かコノ野郎!
ふたりの勇士は、たがいに方天の画戟を使ってわたりあうこと三十余合におよんだが、勝敗は決しなかった。
呂方: …考えてみたら別に掛け声はどうでも良いんだよな。
郭盛: そうだ。勝負さえつけばそれでいいんだから。無難に「ジャンケンポン」にしておこう。
呂方: じゃあ気を取り直していくか!
郭盛: 待て呂方…一回勝負?三回勝負?
呂方: あ?別に一回勝負で良いんじゃねぇの?
郭盛: そうか。もしオマエが負けたとき、「やっぱ三回勝負な」とか言い出さないかと思ってな。
呂方: 俺がそんな器の小さい奴に見えんのかよ!
郭盛: さっき掛け声ぐらいでムキになってたじゃねぇか。だからだよ。
呂方: あぁ!?オマエだってムキになってただろうがよ!
郭盛: なんだと?
呂方: やる気かコノ野郎!
ふたりの勇士は、たがいに方天の画戟を使ってわたりあうこと三十余合におよんだが、勝敗は決しなかった。
呂方: ……やっぱ一回勝負にしよう。さっさと終わりにしたい。
郭盛: 同感だ。今日ほど不毛な戦いをしていると感じたことは無い。いくぞ!
郭盛: ジャン、ケン…
郭盛・呂方: おい、待てよ!
郭盛: 「最初はグー」?さっきそんな事やってなかっただろ!
呂方: 「ちっけった」でやる時は付けねぇよ。けど「ジャンケンポン」なら最初はグーだろ!
郭盛: なんだその理屈?オマエ頭おかしいだろ?
呂方: 自分と違うってだけで頭おかしいまで言うか?その理屈なら俺と違うオマエだって頭おかしいだろ。
郭盛: なんだと?
呂方: やる気かコノ野郎!
ふたりの勇士は、たがいに方天の画戟を使ってわたりあうこと三十余合におよんだが、勝敗は決しなかった。
呂方: ………じゃあ最初はグー、無しで。一発で決めてやる。
郭盛: 一発で決めるのは俺の方だ。もうさっさと終らせて帰って風呂入って寝る。
呂方・郭盛: せぇーの!
呂方・郭盛: ジャンケンポン!
呂方・郭盛: あいこでしょ!
呂方・郭盛: あいこでしょ!
呂方・郭盛: あいこでしょ!
ふたりの勇士は、たがいにじゃんけんを使ってわたりあうこと三十余合におよんだが、勝敗は決しなかった。 |