細胞#1へ

 

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細胞 その2
講師:武松   生徒:魯智深


武松 アンタと話してると体力が削られてく…さっさと終わらせよう。
さて、今度は細胞の発見と研究の歴史についてだけど…

魯智深 酒飲ませろ!飲ませろ酒!シラフで聞いてられるか!

武松 もう集中力切れてんのかよ!早ぇよ、いくらなんでも!
そういえば和尚、ワインって飲んだことある?

魯智深 ワインか…嫌いって訳じゃないが、あのグラスというのが苦手でな。
やはりわしはでかい碗になみなみと注いだのをグイッといくのが好みだな。

武松 いかにもアンタらしい意見だな。俺も同感だが。

魯智深 で、ワイン飲ませてくれんのか?それなら話を聞かないでもないぞ。

武松 あぁ、後でな。まずは話からだ。ワインの蓋に使われてるコルクってあるだろ?

魯智深 ワインの蓋か…わしは開けるのが面倒なんでな、大概の場合ビンの首をひねって
折ってしまうのだ。たしか、何か茶色い木みたいなのが詰まってるんだよな?

武松 そうそう。あれはコルクって植物なんだが、他の木に比べると何かが違う。
普通の木の切れっ端よりも弾力があって、柔らかいんだよな。

魯智深 うむ。柳も枝はしなやかだが、切れっ端にしてしまうとコルクよりも堅いな。
だが、それが今回の話と関係あるのか?オマエもワインが飲みたいだけか?

武松 一緒にすんな!まぁワイン代が経費で落ちることは認めるけれども。
このコルクの性質に目を付けた科学者がいたんだ。名をロバート・フックという。
物理学者としての肩書きも有名だけどな。「フックの法則」というのもあるぐらいだし。
フックはコルクが他の植物よりも柔らかい事に興味を持った。そして一つの仮説を立てた。

魯智深 「コルクはきっとヨガの修行をしているに違いない!」

武松 してねぇよ!

魯智深 そう考えたフックはコルクに負けてなるものかとインドに渡ったのであった。

武松 渡らねぇ!確かに当時のイギリスはインドの利権を巡ってフランスともめてたけども!

魯智深 あいつらもなぁ、商売のことなんぞ考えずにヨガの悟りでも開いてれば平和だったろうに。

武松 まずアンタが悟り開いてから言えよ!

魯智深 お、そんなこと言っていいのか?わし開いちゃうぞ、悟り?

武松 あぁ開け開け、それで満足したらさっさと帰ってくれ。
話を元に戻すぞ。フックは「コルクの中身はきっとスカスカに違いない」と考えた。
そしてそれを実証するために自作の顕微鏡を使ってコルクを観察したんだ。

魯智深 顕微鏡を買う金すらなかったのか、かわいそうになぁ…

武松 当時は顕微鏡が商品化されてなかっただけだっての。
コルクをステージに載せ、レンズをのぞき込むフック。その視界には…

魯智深 真っ暗闇しか見えなかった。驚いてレンズから目を離すと顕微鏡の脇には細い
スリットが開けられてあり、「3分1ポンド」という文字が…

武松 あるわけねぇだろ!なんで自分しか使わない物にそんなお茶目な機能を付ける!

魯智深 いや、研究費の足しになると思ってな。遊びに来た奴らにも無理矢理見せたりしてな。

武松 友達なくすぞ、そんなことしてたら…
顕微鏡で拡大したコルクの切片には無数の隙間があった。薄い壁で仕切られてた沢山の小部屋になってたんだ。

魯智深 なんだ、ヨガ説はハズレか。せっかくインドまで行ったのになぁ。

武松 ヨガ説なんか唱えてねぇしインドも行ってねぇ!
とにかくフックはコルクの中にある無数の小部屋を「cell」と名付けた。日本語では「細胞」だな。

魯智深 コルクの隙間が「細胞」?じゃあわしらも隙間だらけなのか?

武松 いや、そうじゃない。この時フックが見たのは死んだコルクだったのさ。
死んでるから中身も無かったと、まぁそういうわけだ。フック自身も後に生きた細胞を観察したし、
他の学者達もフックに続けとばかりに色々な細胞を観察した。生きた細胞は空洞ではなく中には
水やらなにやらが詰まっていること、どの細胞にも球状の器官が一個含まれていること、植物と
動物の細胞では中に入っている物が微妙に違うこと…色々なことがわかってきたんだ。

魯智深 そうか、細胞には水が詰まっておるのか。わしの細胞には酒が詰まっとるかもしれんが。

武松 かもな…いっぺん見てもらえよ、学者さんに。えらい結果が出そうで怖いが。
一連の研究により、細胞は生物にとって単なる仕切りや部品といったものではなく、もっと重要な物で
あるということが、少しずつではあるが解ってきたんだ。
そして遂に生物学は一つのセンセーショナルな結論に辿り着いた。細胞説だ。

魯智深 「細胞とはヨガの境地である」だよな?

武松 ヨガから離れろよ!「細胞は全ての生物の活動単位である」だ!
シュライデンとシュワンによって提唱されたこの説が
生物学に与えた影響はものすごく大きい。なにせ俺達の体を作ってる細胞一つ一つが生命であると、
まぁそういうことだからな、つまりは。今じゃ世界的に浸透しまくって完全に常識と化しちまってるが。

魯智深 だがわしは知らなかったぞ。常識もまだまだ甘いな。

武松 アンタの知識が少なすぎるんだよ!

魯智深 まぁいいや。とりあえず終わりだよな?さて、ワインワインと。

武松 おい、勝手に終わらせるな!まだだっての!
シュライデンとシュワンの細胞説は細胞分裂についてまで言及できていなかったんだが
フィルヒョーによって細胞を創り出すのもまた
細胞の役割であることが明らかになり…って!俺の分も飲むな!


 

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