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〜 「弟」だから、それが存在理由 〜
宋清の兄は、梁山泊の親玉・宋江です。
サブタイトルにあげた「存在理由」とは「彼が梁山泊にいる理由」です。
一般的に、梁山泊のメンバーが入山する際には「家族とワンセット」というのがならわしみたいな部分があり、
宋江が梁山泊入りする以上は宋清も梁山泊入りするのが自然な流れ、というわけです。
宋清は梁山泊で「宴会係」を務めました。梁山泊の他のメンツは、皆何か一芸に秀でている者揃いなので、
言ってみれば「縁故採用」な宋清が他のメンバーの機嫌を伺い続けなければならないポストに
就かされるのも、致し方のないところでしょう。宋清自身、一番近しいメンバーである兄が高いところに行ってしまっているために、
自分の位置というものが見えなくなっていたかも知れません。
「弟だから」メンバーになっているだけで実務能力がないことは解っており、「弟だから」辞めることもできない…
存在理由により居場所を得られた彼でしたが、その存在理由により一切の自由を奪われたと言って良いでしょう。
兄のおかげで地位を得られたものの、その兄に報いるにはひたすら宴会と接待に身を捧げるしかない彼の悩みは深かったと思われます。
「役に立たない」と周囲に思われ、自分でもそのことは十分承知していた。宋清の環境をそう考えると、
彼の忍耐力・精神力はかなりの物だったのではないでしょうか。少なくとも、自分の役目に押しつぶされ、己を失った兄より。
物語の最後で、彼は梁山泊入り前の地位に戻ります。他のメンバー同様、彼にも政府からのオファーがあったにも関わらず。
田畑を耕しながら、彼はどんな事を思っていたのでしょうか?私は、きっと爽やかな顔で耕作にいそしんでいたと想像するのですが。
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