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〜 水滸伝転職事情 〜
またまた二人同時の解釈文です。「蕭譲と蒋敬」がそうであったように、ここで取り上げる二人も
物語上での接点は殆どありません。あらかじめご了承ください。
金大堅と湯隆は、職人さんです。金大堅はハンコ職人、湯隆は武器職人・・・鍛冶屋さんです。
両者ともに、その職人技を見込まれて梁山泊へと誘われます。
しかし両者の梁山泊との関わりかたは対照的でした。金大堅は梁山泊の公文書偽造工作に役立つ人物として
連行に近い形で入山したのに対し、湯隆は「どうせ鍛冶屋じゃ儲けもたかが知れている」と言った感覚で、
割といそいそと梁山泊入りします。
入山後も、二人の職人さん達はその個性に変化は見られませんでした。金大堅は文に現れないところで
せっせとハンコを作り、湯隆は良い武器作るわその武器振るうわで、それなりの暴れっぷりを披露します。
「望んで入ったわけではない」金大堅が目立たず、「新天地で一山当てよう」という湯隆が
前へ前へと出てくる・・・これはある意味当然の流れです。でもまぁ
山賊にはハンコより武器の方が重要だ
と言われれば、そうなんですけど。両者は、その作る物に適したキャラクターを与えられており、
それゆえにこの作品世界になじんでいる、といえるでしょう。
「おい大堅!オマエは留守番だろ?」
・・・話を戻しましょう。二人の職人さんは、物語の最後まで対照的な人生を歩みます。
金大堅は・・・なんと、その腕を買われ官職を得ることができました。街のハンコ屋さんで終わるはずだった一生が、
梁山泊にかき回され、その上今度は宮仕え・・・政府は彼の「腕」のみを必要とし、彼を「道具」
として扱う感じがあるのですが、彼に言わせりゃ「梁山泊だってそうだったよ」、と言ったところでしょうか。
自分の技量を前面に出し、太く短く散った湯隆。そして周りが放っておかない技量を持ち、
その技量を生涯裏方として使い続けた金大堅。二人の職人さんのドラマは、秀でた技能が
使い方次第で様々な人生の可能性につながることを見せてくれるような気がします。
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