好漢評トップ


水滸伝トップ


ぶぶぶ屋トップ

安道全
〜 ノンケは身を助けず!? 〜


水滸伝は、言って見れば男達のドラマです。いや、むしろ”男”言うより”漢”ですかね、作中でも 良き人物を”好漢”と呼びますし。

そんなわけで、物語の中にはいろいろと男臭い美学が登場します。例えば
「友のために生き、友のために死ぬんじゃあ!」、これはものすごい美徳です。あるいは
「オマエみたいに、弱い者にしか威張れん奴は許せんのじゃあ!」、こういうのも梁山泊に集った 男達を揺り動かす強力なファクターになります。しかし…

「惚れた女も守れんで、何ができるんじゃあ!」
こういうのは美徳ではありません。

前置きが長くなってしまいましたが、本題に入りましょう。
安道全という人物、彼はお医者さんです。しかも水滸伝の世界でナンバーワンの名医です。 それと同時に登場する人物の中でもベストテンに入るくらいの女好きでした。しかも割と小悪魔的な 女性にコロッといってしまうタイプでした。ここが今回の「あらあら」ポイントです。

反政府組織として、政府軍と血で血を洗う抗争を繰り広げていた梁山泊が、彼の力を必要とするのは 、ある意味当然の成り行きでしょう。しかし安道全は梁山泊のオファーを断ります。
その裏には小悪魔チックな愛人の「ねぇ、行かないでぇ・・・私あなたなしじゃ生きていけないのぉ・・・」 みたいな引き留めがあったのでした。

愛人の甘い囁きで身動きがとれない安道全を、梁山泊はどうしたかというと、とてもシンプルな作戦で 解決します。
「愛人を殺す」、以上。
先ほどの男臭い言い回しを用いれば、
「この国がやばいときに、何が愛人じゃあ!」といったところでしょうか。

実際は、彼の愛人は裏で強盗とつるんでたりする悪女でした。安道全にすり寄っていたのも、 世間的によい隠れ蓑だったからでしょう・・・なんて事を知らされ、安道全は愛人のことを忘れ、 梁山泊へ入山するのでした。
その後の彼は、女好きだったなんて設定がまるで無かった事のようにバリバリ仕事に励みます。 なんせ患者には事欠かない職場ですから。

愛する女性を失って梁山泊に入った人物は多いのですが、その中で最も悲恋という感じがしないのが 安道全のケースです。女好きは美徳ではないと言う風土の生んだエピソードでしょう。
「どんなに悪い女だって・・・俺はこいつを愛してたんだぜ」なんて間違っても言わない、言わせないのが 水滸伝の美学なんですね。

 

「水滸伝」トップへ