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宋江
〜 縦の糸を繰る者 〜


彼の経歴(特に遭遇した不運の数々)を説明すると、かなりの時間がかかってしまうので省きます。 要点だけ説明すると以下のようになります。

「まじめだけが取り柄の地方公務員・宋江は、ひょんな事から殺人を犯し、これまでの暮らしを捨てて 逃げることに。逃げる最中にも山賊に食われそうになるわ酒に酔って失敗するわ… しかしある日、彼は己の不幸の原因を知らされる。彼には魔物が憑いていた。しかも子分が107人 もいる、魔物の親玉が。彼にその事実を告げた「九天玄女」の指示に従い、宋江は魔物憑きの 子分を集め、それらの魂を天に返すべく奮闘するのであった…」

まじめが取り柄の彼ですから、「自分だけでなく他の107人も救う」なんていう使命があれば 多少問題のある手段もためらわずに使います。「最終的には皆のため」、これが彼の 原動力となります。過激なまでの使命感で臨み、憑いている悪魔の「格」も手伝って、 宋江は108人の仲間すべてを「梁山泊」に収束させたのです。

私は、水滸伝というのは「収束と破綻の物語」であると考えているのですが、宋江は梁山泊の首領であると同時に 「収束と破綻係」だと考えています。「同じ宿命をもった者達を集める」という名目の下に彼は梁山泊を拡大し、 そして「魔物を天へ帰す」という大義名分のもとに梁山泊を崩壊させ…多くの仲間を死なせていったのです。 物語の最後では彼もまた毒をあおり、天へ召されていきます。

が、宋江の何がかわいそうと言ったら、人並みの暮らしができなかったことでも 魔物憑きだったことでも自殺を余儀なくされたことでもなく、

現代の日本では評判が悪い


事であるような気がします。無能だとか偽善者だとか良いところだけ持っていこうとするとか 彼のせいでだれそれは死んだんだとか…まあ、そういう風に言われまくっている現状こそが、 宋江の最も同情すべきポイントだったりするのではないでしょうか。

…正直言って私もあんまり好きじゃない、ていうか少なくとも「天書を手にした後の宋江」とは、できればかかわりたくないです。

 

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