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張順 #-1



「待てや、黒いの…俺の魚に汚ねぇ手で触んじゃねぇよ!」

 

俺達が二人で商売するのをやめて、あいつが魚の商売始めたとき、
そりゃ俺はさんざん冷やかされたさ。
やれ取り分が不公平だっただの、演技じゃなくマジで殴ってたんじゃねぇかだの…
けどな、あいつが…順が、俺との商売やめた本当の理由は、そんな俗っぽいもんじゃねぇんだよ。

 

「こ…の…バカぢから…がっ!」

 

小さい頃から、あいつは水遊びが大好きな奴だった。
泳ぎでも潜りでも、物心付いたときから俺はもうあいつに勝てなくなってたよ。
俺は負けず嫌いな方だがな、あいつに水練で負けても、全然悔しくはなかった。
そんな弟を、俺はむしろ誇りにさえ思っていたんだ。
…あいつ自身も、自分の力をなにかこう、自分以上の存在が与えた物みたいに捉えていたしな。

 

「…もう一度だけ言う。俺の魚に触んな」

 

話が飛んじまったな。
あいつが俺との商売を辞めた理由…それは、あいつが水の前では自分を偽れねぇからさ。
俺にしたって、そんな事は前々から百も承知だったが、生きるのに必死だったんでな。
とにかく、水を得て己を解放したあいつに勝てる奴なんか、そうはいねぇ。
銘刀?轟斧?…そんなのオマエ、

水ん中じゃ、櫂にもならねぇよ。

 

「仕切り直しだぜ、大将…今度は俺の庭でなぁ!」

 

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